毎日新聞・30日付朝刊「今日のイチオシ!」 編集局次長・堀雅充

【燃料デブリの本格取り出し延期 福島第1原発、51年の廃炉に暗雲】

 東京電力は、福島第1原発で溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の本格的な取り出しについて、当初予定していた2030年代初頭の着手が37年度以降になるとの見通しを明らかにしました。

 燃料デブリの本格的な取り出しは、燃料プール内の使用済み核燃料の取り出しが完了している3号機から始める計画です。その方法については、水をかけ流しながら空気中で取り出す工法と、燃料デブリを充てん材で固めて取り出す工法を組み合わせ、建屋の上と横から取り出す案が有力になっています。東電によると、この作業を精査したところ、放射線量の低減や、作業の妨げになる構造物の撤去などが必要になると分かり、今後12~15年程度はかかる見込みになったということです。

 政府と東電は、廃炉を51年までに完了するとしていて、東電はこの目標の見直しは現時点で「必要ない」と説明しました。しかし、作業開始が大幅に遅れることになり、廃炉完了も後年にずれこむ可能性があります。廃炉の時期は地域の復興計画にも大きな影響を与えます。14年以上が過ぎても廃炉作業の第一歩すら想定通りにならない現実が、原発事故の深刻さを物語っています。(1面)