毎日新聞・7月19日付朝刊「今日のイチオシ!」 統括社会部長 佐藤敬一

【福井中3殺害再審無罪 再審制度見直し議論加速】1986年に福井市で中学3年の女子生徒を殺害したとして、殺人罪で懲役7年が確定し、服役した前川彰司さん(60)に対するやり直しの裁判(再審)で、名古屋高裁金沢支部が18日、無罪判決を言い渡しました。増田啓祐裁判長は「前川さんが犯人であることの立証がされていない」と述べた上で、警察・検察の不正・不当な捜査・公判活動があったと認定。「刑事司法全体に対する信頼を揺るがせかねない深刻なものだ」と批判しました。

 判決は、警察、検察による「供述誘導」「証拠隠し」を指摘し、捜査当局の一連の活動を厳しく批判したものです。検察側が上訴権を放棄すれば、再審無罪が確定することになります。再審はハードルの高さから長らく「開かずの扉」と言われてきましたが、刑事事件を巡っては近年再審無罪判決が相次いでいます。その過程で制度の不備が明らかになっており、今回の無罪判決で再審制度の見直しの機運がさらに高まりそうです。(1、2、社会面)