毎日新聞・20日付朝刊「今日のイチオシ!」 編集局次長・堀雅充

【大山古墳の副葬品を初確認/唯一の実物資料、刀子と甲冑片/7月から一般公開も】

 宮内庁が「仁徳天皇陵」として管理する日本最大の前方後円墳、大山古墳(堺市)の副葬品とみられる刀子(とうす=小型ナイフ)と甲冑の破片が見つかったと、堺市と国学院大などが発表しました。

 刀子と甲冑片は、国学院大が2024年に購入した明治時代の古物収集家、柏木貨一郎の遺品から発見されました。いずれも和紙に包まれた状態で、刀子を包んでいた紙には「明治五年九月」「仁徳帝御陵前之石郭」「刀鐺(かたなこじり)」、甲冑片を包んでいた方には「仁徳帝御陵」「甲冑金具」などと墨書されていました。

 柏木は江戸幕府の大工棟梁を務め、明治維新後には寺社の宝物調査の記録係としても活躍していました。1872(明治5)年9月に大山古墳の前方部の斜面で、何らかの理由によって竪穴式石室があらわになったことがあり、この際に現場に立ち会い、内部にあった長持形石棺や、副葬品の甲冑などの絵図を残した人物です。

 今回の破片はその際に持ち出されたと考えられるそうです。大王墓の副葬品が見つかるのは珍しく、日本最大の大山古墳でも今回見つかったものが唯一の実物資料です。「陵墓」として立ち入りや調査が制限される巨大古墳の実態に迫る発見といえそうです。(1面、社会面)