【JR福知山線脱線事故から20年/犠牲になった父から継いだ「誠実」】
兵庫県尼崎市でJR福知山線の快速電車が脱線し、乗客106人が犠牲になった事故から25日で20年となります。遺族の思いに迫る3回の連載を始めました。
初回は父を失って、家業の仏壇店を継いだ男性の話に耳を傾けました。
「お父さんの電話がつながらないの」。母からの電話を受け、テレビで見た現場に車で駆けつけた男性が覚えているのは、強烈なガソリン臭とヘリコプターのごう音、ひしゃげた車両内からひっきりなしに聞こえる着信音。それと「背中を押される感覚」でした。
後継ぎとして在りし日の父の言葉と向き合ううちに、家族の死に直面して店を訪れる人たちの悲しみに寄り添えるようになってきました。そして、あの日、背中を押したのは、まがいもなく父だった、と思うようになりました。(社会面)