毎日新聞・10月15日付朝刊「今日のイチオシ!」 コンテンツ編成センター長・猪飼順

【ネット時代の個人情報の守り人】

  グーグルやメタ(旧フェイスブック)など「ビッグテック」と呼ばれる米巨大IT企業に挑む青年がいます。ウィーンを拠点とするプライバシー保護団体「noyb」を率いる法律家、マックス・シュレムスさん(36)。「none of your business(私のことは構わないで)」。noybはこの頭文字です。

 欧州には厳格なプライバシー保護法があり、その法律を武器にビッグテックと渡り合う。訴訟や告発で勝ち取った法的判断は幾つもあります。なかでも個人データ保護が不十分として、米国と欧州連合(EU)のデータ移転を巡る枠組みを無効とした2015年の欧州司法裁判所の裁定は「シュレムス判決」として知られています。

 私たちはインターネットを使う度にさまざまな個人データを収集されています。データは巨万の富を生む「21世紀の石油」と称され、それを掌握するビッグテックは国家をも脅かす力を持つ。だが自分自身についてどんなデータが誰に共有され、どう利用されているのか。多くの場合、知ることも決めることもできません。

 

 自分に関する情報をコントロールする「自己決定権」がプライバシーの本質だと、シュレムスさんは言う。「プライバシーのあり方は民主主義と法律で決めるべきだ。耐えがたいのは、それが(ビッグテックが集まる)シリコンバレーによって決められていることです」。シュレムスさんの闘いと背景を追いました。