毎日新聞・3月6日付朝刊「今日のイチオシ!」 編集編成局次長 麻生幸次郎

【「母の罰」賃金以外も 退職くすぶった劣等感/連載企画「産む、産まない、産めない~私の場合」】「育児休暇制度はあるけど、実際に取った例はまだないよ」。上司にそう言われて24年前に退職せざるを得なかった女性(48)は、「母親ペナルティー」を受けてきました。子供がいることでキャリアが中断され、賃金が低下する現象です。彼女はその後、非正規社員として転職を続けるうち、別の会社で上司に認められて正社員に登用され、さらに管理職へ昇格しました。

育児も仕事も求めてきたのですが、子供の読み書きが遅れたのは自分が働いているせいか、夫の理解に甘えて好き勝手に働いているのか――といった思いにさいなまれました。それも「母親ペナルティー」でしょう。しかし管理職になった今、こんな感覚も抱きます。「部下を尊重して、話をよく聞いて、アドバイスする。想像していた以上に子育てと似ているんです」

 

 

連載企画「産む、産まない、産めない~私の場合」を始めました。女性一人一人の物語を通じ、ジェンダー格差や妊娠・出産・中絶を巡る問題を考えます。